西部戦線の英軍重砲
ベルギーの村の被害
廃墟を活用した通信壕
上 西部戦線の英軍重砲
中 ベルギーの村の被害
下 廃墟を活用した通信壕
(『欧州大戦写真帖』より)
 

カイゼン視点から見る

第一次世界大戦


A Review on World War I from Kaizen Aspect

第一次世界大戦の参考図書・資料

第一次世界大戦の
開戦の経緯

航行中の英艦隊
英軍の戦車
米軍の毒ガス対策
上 航行中の英艦隊
中 英軍の戦車
下 米軍の毒ガス対策
(『欧州大戦写真帳』より)
 
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カイゼン視点から見る日清戦争


第一次世界大戦の開戦の経緯

第一次世界大戦の開戦の経緯確認する上で使用したものを、以下に挙げます。

これまでのページで既に挙げた大戦の総合的な記述を行っているものには、当然ながら開戦の経緯にも触れられているのが普通です。ここでは、とくに開戦の経緯自体を主題としたもの、あるいは大戦の開戦までを主題としたもの、を挙げています。


ジェームズ・ジョル(池田清 訳)『第一次世界大戦の起原』 みすず書房 1997
<原著 James Joll, The Origins of the First World War, 1984, Second Edition 1992>

ジェームズ・ジョルはイギリスの歴史家です。本書の目的は、第一次世界大戦を、「ある特定の時点で勃発させるのに寄与したいくつかの理由を考察すること。この特定の時点でこの特定の戦争を勃発させた、1914年7月の諸決定をまず究明、ついでこれらの決定を促進した、ないしは別の選択の自由を狭めた諸原因を分析すること」(本書「序論」)とされています。

フリッツ・フィッシャーが1950年代末に「ドイツ責任論」を主張したことに発した、第一次世界大戦の起源についての論争史の中で、著者の主張は「共同責任論」(JMウィンター著書による)とされています。

ドイツ人研究者が「ドイツ責任論」を言い出し、イギリス人研究者が「共同責任論」を主張したという事実は、学問がナショナリズムに従属させられていない健全な状況を明確に示していると言えます。日本も、ぜひそうありたいものです。

「ドイツの野心、フランスの敵意、ロシアの膨張欲、イギリスの懸念、オーストリアの恐怖感が、重要な国益を防衛するためには戦争は不可避、という決定につながった。ヨーロッパを風靡した精神状況が、戦争をあえて容認、ないしは待望すらするようなものでなかったら、これらの諸決定はなされなかったはず。こうした精神状況の醸成にさらに大きく寄与したのは、帝国主義的対立の現実以上に、むしろ帝国主義の修辞雄弁であった」とする著者の見方は、非常に説得力があるように思われます。

第一次世界大戦の開戦史分野では、必読書であると思います。

本書からは、このウェブサイトでは、「第一次世界大戦が開戦に至った経緯 − サラエヴォ事件からセルビアへの宣戦布告まで」「同 − セルビアへの戦線布告から開戦まで」のページで、要約を引用しています。


義井博 『カイザー − ドイツの世界政策と第一次世界大戦』
清水書院 1976

義井博 カイザー 表紙

清水書院の「人と歴史シリーズ」の1冊として出版されていますが、非常にレベルの高い内容です。

新書版より一回り大きいサイズですが、本文約160ページに対し、40ページ近くの付論 「第一次世界大戦の研究史」が付されているという事実が、本書のレベルの高さを示していると思います。

この付論は、本書の出版年から、1970年代前半までの研究史の整理にとどまっているという制約はあるものの、本書は、この付論だけでも読む価値がある、といえるように思います。

「本書は表題の『カイザー』よりも、むしろ副題の『世界政策と第一次世界大戦』に焦点を合わせ、ドイツ帝国を中心とした第一次世界大戦およびその前史の展開を跡づけている」(本書「あとがき」)ものです。

本文では、カイザーのドイツが第一次世界大戦に進んでいった背景が分かりやすく記述されています。

とくに、ユンカー層のロシアとの利害関係の対立がビスマルクの外交路線からの転換の背景にあったことなど、第一次世界大戦前の独露対立の背景が記述されています。

本書も、第一次世界大戦の開戦史分野での必読書であるといえるように思います。

本書からは、このウェブサイトでは、「第一次世界大戦が開戦に至った経緯 −開戦前のヨーロッパの国境」「同 − セルビアへの宣戦布告から開戦まで」のページで、要約引用を行っています。


馬場優 『オーストリア=ハンガリーとバルカン戦争』
法政大学出版局 2006

「なぜ、ハプスブルク帝国は1914年7月に戦争を決意したのであろうか」という疑問への回答を考えることが、本書の目的です。

著者は、ハプスブルク帝国の共通外相であったベルヒトルトが、外相就任時には「ヨーロッパ協調の帰依者」であったのに、その後の「バルカン戦争によってヨーロッパ協調に『幻滅』していったのではないかとの仮説をもとに、ハプスブルク帝国とバルカン戦争の関連を検討していく」ことが本書の課題です。(以上、本書「序章」)

一般的な日本人は、第一次世界大戦自体に詳しくないぐらいですから、ましてやその根本原因となった、オーストリアとセルビアとの対立およびバルカン戦争については、ほとんど何も知識がない、というのが実情です。

第一次世界大戦の通史でも、オーストリアとセルビアとの対立状況の詳細までは記述されていないのが実態であると思います。本書では、その対立関係と、それをめぐる列国を含む外交関係について、その経緯が詳細に記述されています。

本書は、第一次世界大戦の開戦史を知る上では、やはり読む価値の高い1冊であると思います。

本書からは、本ウェブサイト中の、「第一次世界大戦が開戦に至った経緯 − サラエヴォ事件からセルビアへの宣戦布告まで」、および「同 − 開戦前の各国軍隊の特質」のページで、要約引用を行っています。


大津留厚 『ハプスブルクの実験 − 多文化共存を目指して』
中公新書 1995

第一次世界大戦当時のオーストリア、すなわちオーストリア=ハンガリー二重帝国とかハプスブルク帝国とかと称される国家は、王政が当たり前の時代にハプスブルク家が婚姻や相続によって王位を持つことになった、「ハプスブルク王家が首長である諸王国、諸領邦の集合体」(本書第1章)というもので、その構造は、日本はもちろん他のどの国家とも大きく異なる、きわめてユニークな国家であったようです。

本書は、このユニークな国家の成立の歴史と、19世紀後半〜20世紀初めの時期のこの国家の内情を、わかりやすく記述しています。とくに、国勢調査などの調査データに基づいて、定量的に分析されている点で、この国の内情の複雑さがよく理解できます。

本書を読むと、第一次世界大戦の根本原因となったサラエヴォ事件に対するオーストリアの対応、あるいは、開戦後のオーストリア軍の弱さは、この国家の構造のユニークさに大きくかかわっていた、いうことが分かります。

本書も、第一次世界大戦の開戦史を知る上で、読む価値のある1冊であると思います。

本書からは、本ウェブサイト中の「第一次世界大戦の開戦に至った経緯 − 開戦前の各国軍隊の得失」のページで、要約引用を行っています。


久保田正志
『ハプスブルク家かく戦えり − ヨーロッパ軍事史の一断面』
錦正社 2001

ハプスブルク家の長い歴史の中でハプスブルク家が戦った戦争を記述しています。分厚い本ですが、第一次世界大戦関係の記述は少量です。しかし、1914年から18年まで、各年ごとに、ロシア・バルカン・イタリアの各方面と、海軍の戦況が整理されています。

オーストリアがどのような戦いを行っていたかを記述した類書は見当たらず、その点で非常に価値があるように思います。

本書からも、本ウェブサイト中の「第一次世界大戦の開戦に至った経緯 − 改選前の各国軍隊の得失」、および「第一次世界大戦の経過 − 1914年 B タンネンベルクとレンベルク」のページで、要約引用を行っています。



次は、第一次世界大戦の戦史のうち、大戦の全体像を詳述しているもの、および戦史を理解するのに必要な兵器に関する情報を整理していているものについてです。


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